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日本と中国における電子商取引の比較的視点

はじめに
第1章 電子商取引の発展背景

1.1 日本における電子商取引の歴史的展開
1.2 中国における電子商取引の急速な発展
1.3 双方の市場発展過程の比較的考察

第2章 市場規模と利用者動向

2.1 日本の電子商取引市場の規模と特徴
2.2 中国の電子商取引市場の規模と特徴
2.3 両国における利用者動向の比較

第3章 プラットフォーム企業の戦略比較

3.1 日本の主要EC企業の事業展開
3.2 中国の主要EC企業の事業展開
3.3 プラットフォーム戦略の比較分析

第4章 決済システムと物流インフラ

4.1 日本における決済手段とその特徴
4.2 中国におけるモバイル決済と金融連携
4.3 物流インフラと配送システムの比較

第5章 規制と政策的枠組み

5.1 日本の電子商取引に関する規制と政策
5.2 中国の電子商取引に関する規制と政策
5.3 政策的枠組みの比較的分析

第6章 電子商取引が社会経済に与える影響

6.1 日本社会における消費行動の変容
6.2 中国社会における消費行動の変容
6.3 経済構造への影響の比較的検討

第7章 参考文献一覧

 

1.1 日本における電子商取引の歴史的展開

日本における電子商取引の展開は、インターネットの普及と歩調を合わせる形で進んできた。1990年代前半、インターネットが一般家庭に浸透し始めた頃、まだ回線速度が低く、利用者も限られていたため、電子商取引は一部の企業やマニア層に限定された小規模なものであった。当初は書籍やパソコン関連部品といった比較的軽量で配送が容易な商品が中心であり、Amazonや楽天市場などのECプラットフォームの誕生が大きな転機をもたらした。特に1997年にサービスを開始した楽天市場は、商店街的な出店形式を取り入れることで中小企業や個人商店にも販路拡大の機会を提供し、日本型電子商取引の基盤を形成したといえる。

2000年代に入ると、ブロードバンドの普及とクレジットカード決済の一般化がECの拡大を後押しした。ネットオークションの拡大やモバイル端末の進化により、消費者がオンライン上で商品を探し、比較し、購入することが日常的な行為となった。この時期、ヤフー・ショッピングやヤフオク!の影響力が大きく、日本における電子商取引は単なる代替的購買手段から、消費行動の中心的要素へと変化していった。また、ファッションや食品といった分野にもECが浸透し、従来は対面販売が強かった業種にもオンライン化の波が及んだ。

2010年代以降はスマートフォンの普及が新たな局面を切り開いた。アプリベースのショッピング体験が普及し、消費者は外出先でも気軽に購買活動を行えるようになった。この段階で、Amazonや楽天に加え、ZOZOTOWNなど専門特化型のECサイトが急成長を遂げた。さらに、ポイントサービスや会員制度が普及し、EC市場全体が囲い込み競争を強める構造が定着した。物流インフラにおいても、大手宅配業者のネットワーク強化や翌日配送サービスの普及が、消費者の利便性を一層高めた。

一方で、日本における電子商取引の発展は、現金決済志向の根強さや高齢層のデジタル利用率の低さといった社会的要因によって制約を受けてきた。モバイル決済の普及が比較的遅れ、QRコード決済が本格的に広がったのは2018年以降であり、中国と比べると導入スピードに差があった。また、日本の消費者は品質保証や安全性を重視する傾向が強く、無名ブランドや不透明な販売者からの購入に慎重であったことも、市場の拡大を段階的なものとした。

総じて、日本の電子商取引の歴史は「徐々に拡大し、制度や消費文化と適合して進化した過程」と位置づけられる。インターネット黎明期の実験的段階から、ブロードバンド普及による拡張期、スマートフォン時代の深化期を経て、今日では社会基盤の一部として確立されている。日本型のECは、中小企業の参加や消費者保護の制度設計を伴いながら、独自の発展を遂げてきた点に特徴がある。


 

1.2 中国における電子商取引の急速な発展
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