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日本のバブル経済に関する比較的視野

目次
はじめに
第1章 バブル経済の背景

1.1 国際経済環境と日本経済の関係
1.2 金融緩和政策と資産価格の上昇
1.3 政府と民間企業の経済的行動

第2章 バブル経済の形成過程

2.1 株式市場の高騰の要因
2.2 不動産価格の異常な上昇
2.3 金融機関の貸出行動

第3章 バブル経済の社会的影響

3.1 家計と消費行動の変化
3.2 企業経営への影響
3.3 地方経済と都市経済の格差

第4章 バブル崩壊の過程

4.1 金融引き締め政策の影響
4.2 株価と地価の急落
4.3 金融機関の不良債権問題

第5章 バブル崩壊後の経済的帰結

5.1 長期不況の到来
5.2 失業率と雇用構造の変化
5.3 金融システム改革の展開

第6章 国際比較による視野

6.1 日本とアメリカのバブル経済比較
6.2 日本とアジア諸国のバブル経験
6.3 日本の事例から得られる普遍的教訓

第7章 参考文献一覧

 

1.1 国際経済環境と日本経済の関係

1980年代の日本経済を理解するためには、まず当時の国際経済環境との関連性を詳細に検討する必要がある。日本のバブル経済は、国内的な要因のみならず、世界的な資本移動や通貨体制の変化、国際貿易の動向と密接に関わっていた。特に、1970年代の石油危機以降、世界経済は不安定なインフレや景気後退を経験していたが、日本は製造業の競争力を背景に比較的安定した成長を遂げ、国際収支の黒字を拡大させた。この黒字はやがて円高圧力をもたらし、日本の経済構造に大きな転機を与えることとなった。

1985年のプラザ合意は、日本のバブル経済の形成において極めて重要な契機であった。合意後、各国が協調してドル安政策を進めた結果、円は急速に高騰し、日本の輸出産業は深刻な打撃を受けた。従来、輸出を成長の原動力としてきた日本経済は、急激な為替変動に直面し、国内需要の拡大に経済の活路を見いだす必要に迫られた。この過程で、政府は金融緩和を積極的に進め、低金利政策を継続した。こうした環境は資金供給の過剰を招き、株式や不動産市場へと巨額の資金が流れ込む温床となった。

さらに、冷戦構造下におけるアメリカと日本の政治経済関係も見逃せない。アメリカは経常収支の赤字拡大に苦しんでおり、日本をはじめとする貿易黒字国に対して市場開放や内需拡大を強く要求していた。日本は政治的圧力に応える形で金融市場の自由化や規制緩和を進めたが、その過程で資本取引の自由度が急速に拡大し、国際資本の流入が国内市場に大きな影響を及ぼした。つまり、日本の金融緩和と規制緩和は、単なる国内政策の帰結ではなく、国際経済関係における政治的妥協の産物でもあった。

このように、日本のバブル経済は国際経済環境の変化に強く影響されていた。世界的なドルの地位の変動、アメリカとの経済摩擦、そして資本移動の自由化といった要因が複雑に絡み合い、日本国内における資産市場の過熱を促進した。国内要因としての金融政策や産業構造の特徴と、国際要因としての通貨体制や貿易摩擦が相互作用を起こした結果、1980年代後半にかけて異常な資産インフレが形成されるに至ったのである。日本のバブル経済を単なる国内の経済現象として捉えるのではなく、国際的な経済秩序との関係性の中で理解することが不可欠である。


 

1.2 金融緩和政策と資産価格の上昇
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