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日本の化学産業の国際化動向の概観

目次
はじめに
第1章 日本化学産業の歴史的背景

1.1 戦後復興期における化学産業の発展
1.2 高度経済成長期と産業構造の転換
1.3 エネルギー危機と技術革新の影響

第2章 国際化の進展要因

2.1 貿易自由化と海外市場の拡大
2.2 技術移転と研究開発拠点の展開
2.3 外資との提携と国際競争力強化

第3章 化学製品の国際市場における位置づけ

3.1 石油化学製品の輸出入動向
3.2 ファインケミカル分野の国際競争力
3.3 環境対応型製品の需要拡大

第4章 企業戦略と国際展開

4.1 海外直接投資の拡大と拠点形成
4.2 合弁事業と提携戦略の展開
4.3 M&Aを通じたグローバル競争への対応

第5章 国際化に伴う課題

5.1 環境規制と企業対応の変化
5.2 技術流出と知的財産保護の問題
5.3 国際価格競争と収益性の低下

第6章 比較的視野からの考察

6.1 欧米化学産業との比較分析
6.2 アジア新興国との競争関係
6.3 国際産業秩序における日本の役割

第7章 参考文献一覧

 

1.1 戦後復興期における化学産業の発展

日本の化学産業は戦後復興期において、国民経済の基盤産業として重要な役割を担った。第二次世界大戦の敗戦により、産業基盤は大きな打撃を受けたが、復興と経済再建の過程において、化学産業は他の製造業を支える中核分野として位置づけられた。肥料、合成繊維、基礎化学品といった製品は、農業の生産力向上や国民生活の改善、さらには軽工業から重化学工業への産業構造の転換を推進する要素となった。

戦後直後、日本の化学産業は深刻な原材料不足に直面していた。石油や天然ガスといった主要資源を海外から輸入せざるを得ず、供給面では制約が大きかった。しかし、アメリカからの技術導入や資本援助を背景に、基礎化学分野の生産体制は徐々に整備されていった。特にGHQの占領政策の下で、窒素肥料や合成樹脂の製造が優先的に再建され、食料増産や生活必需品供給の基盤が築かれた。これは国民生活の安定だけでなく、戦後の経済復興を支える重要な要因となった。

1950年代に入ると、朝鮮戦争による特需景気が化学産業の拡大を後押しした。軍需物資や基礎資材の需要が高まり、日本の工業生産は急速に回復した。化学産業はこの需要を背景に生産能力を拡大し、戦前の水準を超える規模に成長した。同時に、アメリカから導入された最新技術やプラント設備が、日本の化学企業の競争力を強化した。こうした外資との技術提携は、日本の化学産業が短期間で国際的に通用する基盤を獲得する契機となった。

また、この時期に特徴的であったのは、軽工業を支える合成繊維やプラスチック製品の急速な普及である。綿花や絹といった天然素材に依存していた繊維産業は、合成繊維の導入によって生産性を大幅に高め、国内外市場での競争力を獲得した。さらに、日常生活におけるプラスチック製品の需要拡大は、石油化学工業の成長を促し、後の高度経済成長期への布石となった。

総じて、戦後復興期の日本化学産業は、資源制約や技術的遅れを克服しつつ、国家の経済再建を支える重要な役割を果たした。この段階で形成された基礎化学品や合成素材の生産基盤は、1960年代以降の重化学工業化を推進する原動力となり、さらには国際市場への進出を可能にする出発点ともなったのである。


 

1.2 高度経済成長期と産業構造の転換
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