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池田勇人政権の政策に見る戦後日本経済飛躍の要因分析

目次
はじめに
第1章 池田勇人政権成立の歴史的背景

1.1 戦後復興から高度成長への転換点
1.2 国際環境と冷戦構造の影響
1.3 国内政治基盤の形成と安定化

第2章 池田勇人の経済政策理念

2.1 「所得倍増計画」の基本構想
2.2 成長重視と国民生活改善の位置づけ
2.3 政策理念における自由経済と国家介入の調和

第3章 財政・金融政策の展開

3.1 公共投資拡大と財政政策の役割
3.2 金融緩和と資本市場の拡大
3.3 国際収支と円の安定政策

第4章 産業政策と技術革新の推進

4.1 重化学工業化と産業構造転換
4.2 技術導入と研究開発の強化
4.3 輸出振興と国際競争力の確立

第5章 社会政策と国民生活の変容

5.1 教育政策と人材育成の拡充
5.2 福祉政策と生活水準の向上
5.3 都市化とインフラ整備の進展

第6章 経済飛躍の成果と影響

6.1 高度経済成長の実現とその要因
6.2 企業社会と雇用慣行の変化
6.3 日本経済モデルの確立と国際的評価

第7章 参考文献一覧

 

1.1 戦後復興から高度成長への転換点

戦後日本は、焼け野原となった国土と疲弊した経済の中から再出発を余儀なくされた。1945年の終戦直後、日本はGHQ(連合国軍総司令部)による占領統治のもとで政治・経済・社会の抜本的な再編を経験した。農地改革や財閥解体、労働三法の導入といった民主化政策が実施される一方、戦前からの重工業中心の経済構造は解体され、生産能力も著しく低下していた。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、戦地に近い日本は「特需」によって急速な経済回復の機会を得ることになる。この特需は、鉄鋼や機械、繊維といった基幹産業に莫大な需要をもたらし、日本国内の産業復興と雇用創出に直結した。

1950年代中盤には、国内市場の回復とともに工業生産が本格化し、輸出産業の成長も著しくなった。1955年には「神武景気」が始まり、1958年の「岩戸景気」へと続く一連の好況期が到来した。こうしたなかで日本政府は、計画的な経済運営と産業育成の必要性を認識し、通商産業省を中心とする行政指導体制を確立させた。これにより、鉄鋼、造船、自動車、家電などの重点産業に対する支援が集中的に行われた。また、民間企業側でも、終身雇用制や年功序列を基盤とする労使関係の安定化が進み、労働力の質と量が安定的に供給される体制が整った。

さらに、1950年代後半には国内市場の拡大と中間層の形成が進み、消費意欲の高まりが経済成長を内需主導型へと変化させていった。家庭用電化製品や自動車といった耐久消費財の需要が増大し、関連産業全体に波及効果をもたらした。また、国際環境としても、アメリカを中心とした自由貿易体制が構築され、日本の輸出拡大を後押しする要因となった。

このように、池田勇人が政権を担う直前までの時期において、戦後復興期から高度経済成長への地盤は着実に形成されていた。復興支援と特需景気による基礎体力の獲得、政策当局と産業界の連携強化、労働環境の安定、消費市場の拡大、国際経済との結びつきの深化といった複数の要素が複合的に作用し、日本経済は戦後の混乱から脱し、成長軌道に入る準備を整えていた。このような歴史的背景が、池田政権による本格的な成長政策の推進を可能とし、戦後日本経済の飛躍への土台を築いたのである。


 

1.2 国際環境と冷戦構造の影響
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