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ドラッグストアの販売モデルの考察

目次

はじめに
 1.1 研究背景と問題意識
 1.2 研究の目的と意義
 1.3 研究方法と論文構成

ドラッグストア市場の歴史的発展
 2.1 日本におけるドラッグストアの起源と展開
 2.2 1990年代以降の市場拡大と業態変化
 2.3 海外市場との比較に見る特徴

ドラッグストアの販売戦略の基本構造
 3.1 低価格戦略と価格競争のメカニズム
 3.2 PB商品の導入とブランド戦略
 3.3 地域密着型サービスと差別化戦略

商品構成と購買行動分析
 4.1 医薬品と日用品の販売バランス
 4.2 顧客層別の購買傾向とニーズ分析
 4.3 季節要因と販促施策の関連性

店舗運営モデルとサプライチェーン
 5.1 店舗網拡大戦略と立地選定
 5.2 物流システムと在庫管理手法
 5.3 デジタル技術の導入と効率化

課題と今後の展望
 6.1 過当競争と業界再編の課題
 6.2 高齢化社会に対応したサービス戦略
 6.3 EC市場との競合と共存モデル

参考文献一覧


 

1.1 研究背景と問題意識

ドラッグストアは、日本の小売業界において近年急速に拡大を遂げた業態の一つであり、その存在感は都市部から地方まで幅広く浸透している。もともと薬局や調剤薬局の延長線上に誕生した店舗形態であったが、1990年代以降、医薬品に加え化粧品や日用品、食品などを幅広く取り扱う総合型店舗へと進化を遂げた。この変化は、薬事法の改正や規制緩和を背景に、一般用医薬品の販売自由化やセルフメディケーションの推進が進んだことに加え、大手資本の参入やM&Aによる企業規模の拡大が相次いだ結果である。こうした業界の成長は、単なる販売形態の多様化にとどまらず、日本の消費行動や小売市場全体の競争環境を大きく変える契機となった。

近年、ドラッグストア業界は従来の「薬を販売する店舗」という位置付けから脱却し、地域社会における生活必需品の供給拠点、さらには健康や美容を中心とした生活総合サービス拠点へと役割を拡大している。特に大手チェーンは、低価格戦略やプライベートブランド(PB)商品の展開、食品の取り扱い強化などを通じて、スーパーやコンビニエンスストアと競合しながらも独自の市場ポジションを確立しつつある。この動きは、消費者のライフスタイルや購買行動の変化と密接に関連しており、低価格志向や利便性重視の購買スタイルの浸透、さらにはEC市場の拡大など、多様な外部環境要因の影響を受けながら進展している。

一方で、ドラッグストア業界は急成長の裏で数多くの課題も抱えている。店舗網の拡大による過当競争は業界全体の利益率を圧迫しており、地域によっては過剰出店が顕在化している。また、薬剤師や登録販売者など専門職人材の確保は、業界のサービス品質や薬事対応の面で深刻な課題となっている。さらに、消費者行動のデジタル化やEC市場の台頭は、リアル店舗中心の販売モデルに変革を迫っている。これらの状況は、単なる価格競争や店舗数拡大では今後の成長が難しいことを示唆しており、販売モデル全体の再構築が求められている。

このような背景のもとで、本研究はドラッグストアの販売モデルを多角的に考察し、その競争優位性の源泉や今後の方向性を明らかにすることを目的とする。販売モデルとは、商品の仕入れや陳列方法、価格戦略、販促施策、顧客サービスの設計といった要素の総合体であり、小売業における競争力を左右する中核的な仕組みである。ドラッグストアは薬局の枠を超えた総合小売業態として進化してきた経緯を持つため、販売モデルの変遷や現状を分析することは、日本の小売市場全体の構造的変化を理解する上でも重要な意味を持つ。

加えて、ドラッグストアは地域社会における「生活インフラ」としての役割を担っており、その販売モデルは消費者の購買体験や生活の質の向上と密接に結び付いている。高齢化や人口減少といった社会構造の変化、地方の買い物弱者問題などの課題を考慮すると、ドラッグストアの販売モデルは単なる企業戦略にとどまらず、社会的価値を生み出す仕組みとしても重要である。こうした視点から、当研究はドラッグストア業界の販売モデルを、経済的競争力の観点と社会的役割の両面から捉え直し、現状の課題や今後の展望を理論的かつ実証的に検討することを目指す。


 

1.2 研究の目的と意義

本研究の目的は、ドラッグストアの販売モデルを多角的に分析し、その特徴や競争優位性の源泉、さらに今後の発展可能性を体系的に明らかにすることである。近年、ドラッグストアは単なる薬の販売拠点にとどまらず、日用品や食品、化粧品、健康関連商品を幅広く取り揃えた総合型小売業態としての存在感を高めてきた。特に1990年代以降、薬事法改正や規制緩和による一般用医薬品販売の自由化を契機に市場が急速に拡大し、都市部から地方まで多店舗展開が進行している。こうした業界の変化は、従来のスーパーマーケットやコンビニエンスストアを中心とする小売構造に大きな影響を与え、消費者行動や購買体験にも変革をもたらした。これらの背景を踏まえ、販売モデルの形成過程や進化のメカニズムを解明することは、業界の将来像を描く上で不可欠である。

本研究の意義は大きく三点に整理できる。第一に、学術的視点からの意義である。これまでドラッグストアの経営戦略や業界構造に関する研究は散見されるが、その販売モデルを「仕入れ・物流」「店舗運営」「顧客接点」「価格・販促戦略」「デジタル技術活用」といった複数の要素に分解し、総合的に考察した研究は十分とはいえない。小売業態の進化を理論的枠組みの中で捉えることで、ドラッグストアの成長を可能にした要素間の相互作用や独自性を明らかにでき、小売経営学やマーケティング論への学術的貢献が期待される。

第二に、実務的視点からの意義である。近年、ドラッグストア業界は激しい価格競争と過当出店競争に直面しており、利益率低下や業界再編の圧力が強まっている。この状況で企業が競争優位を確保するには、単に店舗数を増やすだけでなく、効率性と顧客価値を両立させる販売モデルの最適化が不可欠である。本研究の成果は、物流システムの改善やデジタル技術を活用した販売戦略設計、地域特性を踏まえた出店・商品構成の検討など、実務現場に直接応用できる指針を提示するものとなり得る。

第三に、社会的意義である。日本社会は高齢化や人口減少といった構造的変化を迎えており、地方部や過疎地域では買い物弱者問題が深刻化している。ドラッグストアは医薬品販売を軸に、生活必需品や食品をワンストップで提供する役割を果たし、地域住民の生活インフラとしての機能を担っている。この観点から販売モデルの特性を研究することは、ドラッグストアを地域包括ケアや健康増進施策の一環として位置付けるための重要な手がかりとなり得る。単なる企業戦略ではなく、公共的価値を内包した小売モデルの研究は、政策立案や地域社会への貢献の観点からも大きな意義を持つ。

さらに、デジタル化やEC市場の台頭に伴い、消費者の購買行動は急速に変化している。オンラインとオフラインを組み合わせたオムニチャネル戦略の構築、データを活用した個別化マーケティング、在庫管理や物流の高度化など、販売モデルは今後も進化を続けることが求められる。本研究では、これらのトレンドを踏まえつつ、従来型の店舗販売モデルと新たなテクノロジー主導のモデルを比較・整理し、業界全体の競争環境変化を俯瞰することで、未来志向の小売戦略の構築に資する知見を提供する。

総合すると、本研究はドラッグストアの販売モデルを理論的・実務的・社会的の三つの側面から包括的に解明し、業界の進化と社会的役割を理解するための新しい視座を提示することを目指す。こうした研究は、小売業の将来像を議論するうえで不可欠な知見を提供し、企業や地域社会にとって価値ある指針となるだろう。


 

1.3 研究方法と論文構成
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