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日本デザインセンターの経営方針と戦略の分析

目次

はじめに

1. 日本デザインセンターの設立背景と発展経緯
1.1 設立の目的と初期ビジョン
1.2 組織構造と変遷の流れ
1.3 歴史的プロジェクトと社会的影響

2. 経営理念と企業文化の特徴
2.1 経営理念の形成とその実践
2.2 社内文化とクリエイター気質
2.3 組織内コミュニケーションと意思決定

3. 事業領域とサービス構成
3.1 グラフィックデザイン事業の展開
3.2 コンサルティング型サービスの拡張
3.3 デジタル分野への参入と課題

4. 顧客戦略とブランド構築手法
4.1 顧客との関係構築と長期取引の特徴
4.2 ブランド戦略における差別化手法
4.3 プロジェクトマネジメントと納品品質

5. 人材戦略と組織運営の実態
5.1 採用方針とクリエイティブ人材の特性
5.2 育成制度とキャリア形成支援
5.3 組織運営と柔軟な働き方の構築

6. 経営課題と今後の展望
6.1 外部環境の変化と戦略的対応
6.2 デザインとビジネスの融合課題
6.3 国内外展開と競争環境への認識

7. 参考文献一覧


 

1.1 設立の目的と初期ビジョン

日本デザインセンター(以下、NDC)は、1959年に東京で設立された総合デザイン会社であり、その創設の背景には戦後日本における産業復興と国際競争力の強化という社会的要請が深く関係している。設立の主体は、当時の経済産業省(旧通商産業省)と民間企業による共同出資であり、特に三井グループ各社や電通など大手企業が出資に関与したことからも、その国家的な意義と業界横断的な構想の大きさがうかがえる。NDCの創設は単なるデザイン会社の設立ではなく、国際市場における日本製品の競争力向上と、デザインによる産業振興を目指した戦略的プロジェクトの一環であった。

当時の日本は、戦後の復興期を脱し、高度経済成長へと向かう準備段階にあったが、製品そのものの性能や価格競争力だけでは欧米市場での存在感を確立することは難しかった。工業製品や消費財の輸出拡大を目指すうえで、機能性や品質に加えて「視覚的価値」や「ブランド力」といった要素が重視され始めていた。こうした文脈の中で、NDCは「日本製品の国際的評価をデザインで引き上げる」という明確な設立目的を掲げ、官民連携によってその実現を目指す場として設立されたのである。

初期のビジョンは、単なる広告や商品パッケージの制作にとどまらず、「企業の価値を可視化する包括的なデザイン」を提供することにあった。これは、ロゴやパンフレットといった視覚表現だけでなく、企業の理念や製品哲学を反映した統一的なコミュニケーション戦略をデザインによって形づくるという思想に基づいていた。つまり、NDCは当初から“表層的な装飾”ではなく、“経営とデザインの融合”を指向していたのである。この理念は、当時としては先進的かつ挑戦的なものであり、単なる制作会社ではなく「デザインの中核機関」としての役割を期待されていたことがわかる。

そのため、創設メンバーには当時の日本を代表するグラフィックデザイナーやアートディレクターが多数集結しており、NDCは国内外から注目される知的集団として出発した。初代代表を務めたのは、後に日本のグラフィックデザイン界を牽引する人物であり、設立直後から大手企業のブランドロゴや広告ビジュアル、展示会の空間デザインなどを多数手がけ、企業と社会における「デザインの役割」を再定義していった。

このように、NDCの設立は、戦後日本における産業と文化の交差点において、国家的課題を背景に生まれた先駆的な試みであった。その初期ビジョンは、単に美しいものを作るのではなく、社会と企業の価値を総合的に可視化し、日本の産業をグローバルに通用する形へとデザインの力で昇華させることであった。この基本姿勢は今日に至るまでNDCの経営方針に通底しており、単なる制作の枠を超えた「戦略としてのデザイン」を実践する拠点としての性格を色濃く残している。


 

1.2 組織構造と変遷の流れ
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