自然教育の発展の歩みと実態把握
はじめに
1. 自然教育の概念と起源
1.1 自然教育の定義と範囲
1.2 西洋思想における自然と教育の関係
1.3 日本における自然観と教育的価値観
2. 明治から戦前期にかけての自然教育の導入
2.1 近代化と自然教育の出発点
2.2 教育制度の整備と自然学習の位置づけ
2.3 山林学校・農学校における自然教育の事例
3. 戦後復興と自然教育の再編
3.1 戦後教育改革と自然体験重視の流れ
3.2 学校林・自然観察林の展開
3.3 青少年教育団体と自然活動の普及
4. 高度経済成長期と自然教育の変質
4.1 都市化・工業化と自然疎外の進行
4.2 学校教育における自然教育の後退
4.3 市民運動としての自然保護教育の台頭
5. 現代における自然教育の多様化
5.1 環境教育との接続と脱学校化の動き
5.2 自然体験活動を支えるNPO・民間団体の役割
5.3 森のようちえん・里山教育の実践的展開
6. 自然教育の課題と展望
6.1 教育行政と現場の乖離
6.2 自然教育の評価と可視化の問題
6.3 今後の地域連携と学際的アプローチの必要性
7. 参考文献一覧
1.1 自然教育の定義と範囲
自然教育とは、人間が自然との直接的な関わりを通じて知識や価値観、感性を形成していく教育的営みである。これは単なる生物学的知識の習得にとどまらず、自然との対話を通じて人間存在の位置づけを再認識し、内面的な成熟を促すものである。自然教育の目的は、自然に対する理解の深化、生命への畏敬の念の涵養、そして自然環境と人間社会の共生的関係の探求にある。
自然教育の定義は一義的ではないが、一定の共通点が見られる。それは、自然と直接触れ合う「体験」を中核とし、その体験が知的理解だけでなく、情緒的・身体的・倫理的次元にも作用するという点である。具体的には、森林での観察活動や田畑での作業、野外キャンプや登山といった活動を通じて、子どもや若者は自然の摂理や循環、生態系の多様性を身体感覚として学び取る。このような学びは、教室内での座学では得られない実感的な理解を生み出すとされている。
自然教育はまた、環境教育や野外教育、体験学習、エコツーリズムなどと重なり合う領域を持つ。特に近年では、環境問題の深刻化を背景に、自然教育の中に「環境保全」や「生物多様性の理解」といった要素が取り込まれる傾向が強まっている。ただし、自然教育が持つ根源的な意義は、単なる知識や情報の伝達ではなく、自然との共存を身体と精神の両面から学ぶ点にある。
教育の文脈においては、自然教育は学校教育と社会教育の両領域にまたがる。学校においては理科や生活科、総合的な学習の時間などで展開される一方、地域の自然体験活動や自然観察会、自然学校などを通じて、学校外でも実施される。さらに、近年注目されている「森のようちえん」や「里山保育」のような取り組みは、幼児期から自然との触れ合いを中心に据えた教育実践であり、自然教育の可能性を広げている。
このように、自然教育は多層的であり、教育学、環境学、社会学、人間学など複数の学問領域にまたがる概念である。そのため、本研究では自然教育を「自然との直接的な体験を基盤とし、身体性と感性に根ざした学びを通じて、人間と自然の関係性を再構築する教育実践」と捉え、以後の章でその発展過程と現代的意義を整理していく。
1.2 西洋思想における自然と教育の関係
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