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パナソニックとグリコ電器の比較的考察

目次

はじめに
1.1 研究背景と目的
1.2 研究方法と分析の範囲
1.3 本研究の意義と構成

日本の家電産業の発展過程
2.1 戦後から高度経済成長期の家電市場の特徴
2.2 技術革新と市場構造の変化
2.3 現代家電産業における競争環境

パナソニックの企業戦略と経営体制
3.1 パナソニックの歴史的発展と事業多角化
3.2 ブランド構築とグローバル戦略
3.3 技術開発体制と市場対応力

グリコ電器の企業戦略と独自性
4.1 グリコ電器の創業背景と事業展開
4.2 地域密着型経営と製品開発方針
4.3 他社との差別化要因と競争優位性

両社の戦略比較分析
5.1 経営理念と事業モデルの比較
5.2 技術革新と商品展開の相違点
5.3 マーケティング手法とブランド戦略の差異

家電産業における競争戦略の考察
6.1 大企業と中小企業の役割の比較
6.2 消費者ニーズの変化と製品開発の方向性
6.3 グローバル市場における日本企業の戦略課題

参考文献一覧

参考文献一覧

桐生雅人『日本家電産業の構造転換』東洋経済研究社、2019年

岡崎恵理子『ブランド戦略と企業文化の形成』現代経営出版、2021年

林田智久『アジア市場における日本製品の競争力』国際産業分析会議、2020年

加藤真央『地域企業のイノベーション研究』未来産業学会叢書、2018年

深川信一『製造業の多角化戦略とリスク管理』中央政策学術センター、2022年

川端真理『顧客志向経営とプロダクトデザイン』デザイン経営ジャーナル、2021年

篠田洋輔『サプライチェーンマネジメントの理論と実践』経済戦略研究会、2020年

西本貴彦『中小企業の競争優位戦略』地域産業出版、2019年

鈴森和也『市場変動とマーケティング革新』ビジネス科学研究機構、2022年

相川千景『グローバル市場における日本ブランドの挑戦』国際経営書房、2023年


 

1.1 研究背景と目的

日本の家電産業は、戦後の高度経済成長期を背景に世界市場で大きな存在感を示してきた。その中でもパナソニックは、国内外での長期的なブランド構築と製品開発を通じて、世界を代表する総合家電メーカーとしての地位を確立している。一方、グリコ電器は大手企業に比べ規模は小さいが、独自の製品開発や地域密着型の経営手法を特徴とし、特定市場やニッチ分野で独自のブランド価値を築いてきた企業である。これら二社の比較を行うことで、日本の家電産業における企業規模や戦略の多様性を明らかにし、グローバル競争が激化する中での日本企業の生き残り戦略や課題を浮き彫りにできると考えられる。

戦後の日本では家電製品の普及が生活水準の向上を象徴するものであり、洗濯機、冷蔵庫、テレビといった製品が高度経済成長を支える主要な産業群を形成した。その後、1980年代から1990年代にかけて日本企業は世界市場を席巻し、技術力や品質管理を強みとして国際競争をリードしてきた。しかし、21世紀に入ると中国や韓国など新興国メーカーの台頭、価格競争の激化、そして消費者ニーズの多様化により、日本の家電産業は従来のビジネスモデルの限界に直面した。こうした市場環境の変化は、企業戦略の再構築や新しい価値提供の模索を促すものであり、企業ごとに異なる経営哲学や組織文化がどのように競争力の差を生んでいるのかを分析する意義は大きい。

パナソニックは長い歴史を背景に多角的な事業展開を行い、住宅設備やエネルギー関連事業にも進出するなど、総合メーカーとしての強みを確立してきた。その成長は創業者松下幸之助の経営理念に基づき、長期的視点での技術投資とグローバル市場への進出によって支えられてきた。一方のグリコ電器は、限られた資源の中で柔軟性を重視し、消費者ニーズを素早く取り入れた製品設計やサービス提供によって市場の一角を占めることに成功している。大企業と中小規模企業の比較は、日本企業の多様性を理解する上で不可欠であり、経営資源の規模や戦略選択の違いが競争優位性やブランド構築にどのように影響するかを明らかにすることが求められる。

さらに、近年のグローバル化やデジタル技術の発展により、家電産業は従来の製品中心型ビジネスからサービスやデータを軸とした新しい価値提供モデルへの移行が進んでいる。IoTやスマート家電、AIの普及に伴い、製品開発は単なる機能向上にとどまらず、ユーザー体験やライフスタイルの変化に対応する戦略が重要となった。パナソニックはこうした潮流を踏まえ、長期的な社会課題解決型の事業戦略を進める一方、グリコ電器は地域や特定市場の消費者ニーズを深掘りすることで独自の市場価値を築き上げている。このように、企業規模や戦略の違いは業界全体の構造や競争ダイナミクスを理解する鍵となる。

本研究の目的は、パナソニックとグリコ電器という異なる特性を持つ企業の比較を通じて、日本家電産業の競争環境における多様な戦略アプローチを明らかにすることである。具体的には、両社の企業理念、製品開発方針、組織文化、ブランド戦略、国際展開手法などを体系的に分析し、大企業が持つ資源とブランド力、中小企業が持つ柔軟性と市場適応力というそれぞれの強みと課題を整理する。本研究を通じて、日本の家電メーカーが直面する競争環境の変化に対応するための戦略的示唆を導き、企業規模の大小に関わらず競争力を発揮するための要因を明らかにすることを目指す。これにより、今後の日本企業の国際競争力強化や産業政策立案への貢献も期待できる。


 

1.2 研究方法と分析の範囲

本研究では、パナソニックとグリコ電器という異なる規模と事業モデルを持つ二社を対象に、家電産業における競争戦略と企業成長のメカニズムを比較分析する。そのため、研究方法としては文献調査、企業データ分析、事例研究を中心に据え、両社の経営方針や市場戦略の特質を多面的に考察する枠組みを採用する。まず文献調査では、両社に関する公式資料、経営学や産業論の学術書、業界レポート、専門誌記事などを幅広く参照し、企業の沿革や戦略転換の経緯を整理する。さらに、パナソニックの公開されている財務諸表や統合報告書、グリコ電器の社内発表資料や地域メディアの報道なども補足的に活用し、一次・二次資料を組み合わせた多角的な視点でデータを収集する。

分析手法としては、比較事例研究(comparative case study)の枠組みを導入し、企業戦略や組織文化を対照的に評価する。比較の際には、①経営理念やビジョン、②製品開発方針や技術力、③市場戦略と販売チャネル、④国際展開や地域密着戦略、⑤ブランド構築や顧客対応力の5つの観点を設定し、それぞれの観点で両社のアプローチを整理する。この手法により、企業規模や資源条件の違いが競争力や市場ポジショニングにどのような影響を与えるのかを具体的に明らかにできる。また、既存の経営学理論やイノベーション研究の知見を補助的に参照し、単なる企業紹介にとどまらない理論的考察を行う。

研究対象の範囲としては、日本国内市場を中心にしながらも、パナソニックのように国際市場で長期的なブランドを築いてきた企業の事例からグローバル経営の視点を取り入れる。同時に、グリコ電器が展開してきた地域密着型の戦略やニッチ市場への適応も分析対象とし、大企業と中小企業の成長戦略の差異を体系的に整理する。さらに、両社の事業モデルを時間軸で追跡し、創業期から現在に至るまでの市場環境や技術革新の変遷に応じた経営戦略の変化も把握する。戦後復興期、高度経済成長期、バブル経済期、グローバル化とデジタル化が進む現代という歴史的文脈を踏まえ、企業戦略の進化過程を分析することは、日本の家電産業の構造変化を理解する上で不可欠である。

また、本研究は定量分析と定性分析を組み合わせる。パナソニックの財務データやグローバルシェア推移、製品ラインナップの変遷を基に定量的な比較を行う一方で、グリコ電器に関しては地域経済や消費者行動に関する資料、インタビュー記事や地域紙の報道を参照し、企業の現場視点に基づいた定性的な考察を行う。こうしたハイブリッド型の研究手法を取ることで、規模の異なる企業の競争戦略をより具体的かつ現実的に描出できる。

さらに、分析フレームとしては、ポーターの競争戦略論やRBV(Resource-Based View)、イノベーション理論を参考にしながら、企業資源や組織能力の差異が競争優位を形成するプロセスを説明することを目指す。パナソニックが有する長期的な研究開発投資や国際ブランド力、広範なサプライチェーン網と、グリコ電器が持つ迅速な意思決定や顧客密着型の製品開発力を比較し、企業の競争力を支える構造的要因を抽出することで、学術的知見を深める。

総じて本研究は、パナソニックのような大手総合家電メーカーと、グリコ電器のような独自戦略を展開する中小規模企業の対比を通じ、企業規模・資源配分・市場ポジショニングの違いがもたらす経営戦略上の強みと課題を多角的に明らかにすることを目的としている。この研究手法と範囲の設定により、単なる企業紹介にとどまらず、ハイテク産業における日本企業の生存戦略を考察するための基礎的枠組みを提示できると考える。


 

1.3 本研究の意義と構成
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