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観光立国政策が日本観光産業の発展に及ぼす影響の考察

目次

はじめに
 1.1 研究背景と目的
 1.2 研究課題と分析の枠組み
 1.3 研究方法と構成概要

観光立国政策の形成過程
 2.1 政策制定の歴史的背景
 2.2 観光基本法と関連政策の概要
 2.3 政策転換期と国家戦略としての観光振興

日本観光産業の発展要因
 3.1 経済成長と観光需要の変化
 3.2 地域資源の活用と観光産業の多様化
 3.3 インバウンド観光市場の拡大要因

政策が観光産業に与えた直接的影響
 4.1 観光インフラ整備と産業競争力向上
 4.2 観光プロモーション政策の効果
 4.3 観光関連制度改革とビジネス環境の変化

観光立国政策と地域経済の連動
 5.1 地方創生施策と観光産業の役割
 5.2 地域資源活用と観光ブランド戦略
 5.3 観光産業を核とした地域経済構造の変化

課題と展望
 6.1 観光産業の成長に伴う課題の分析
 6.2 国際競争環境と日本観光の課題
 6.3 今後の観光政策と産業発展の方向性

参考文献一覧


 

1.1 研究背景と目的

当研究は、日本が推進する観光立国政策が国内観光産業の発展にどのような影響を及ぼしてきたかを明らかにすることを目的とする。日本は長らく製造業や輸出主導型の経済成長を基盤として発展してきたが、少子高齢化や人口減少、国内市場の縮小といった構造的課題の顕在化により、経済成長を持続させるための新たな産業基盤の模索が急務となった。その中で観光産業は、地域経済の活性化や国際収支改善に寄与する成長産業として注目を集め、政府主導で戦略的な観光立国政策が進められてきた。この政策は単なる観光振興策にとどまらず、国際競争力の高い観光市場の構築を目指す国家戦略の一環として位置付けられている。

日本が観光政策を本格的に国家戦略へと格上げした背景には、グローバル化と国際的観光市場の成長がある。国際観光客数は2000年代以降急速に増加し、世界観光機関(UNWTO)の統計によれば、観光産業は世界GDPの重要な構成要素となっている。こうした世界的潮流を受け、日本でも2003年に観光立国宣言が発表され、訪日外国人旅行者数の増加や地域観光資源の開発が国家的課題として位置付けられた。その後、観光庁の設置やビザ緩和政策の推進、空港や鉄道などの観光インフラ整備が進められ、観光産業は従来の国内旅行需要中心の構造から、インバウンド観光を軸とした成長産業へと変化していった。

また、観光立国政策は単に外国人観光客誘致を目指すものではなく、地域経済の多角化と新たな産業の創出を目標としている点でも注目される。地方都市や農山漁村など、人口減少や産業空洞化に悩む地域にとって、観光は地域資源を活用した経済活性化の有効な手段となりうる。この政策の推進により、従来は観光地として認識されていなかった地域が国内外からの注目を集め、新しい観光需要を生み出す事例が増加した。観光を軸とした地域ブランディングや体験型観光の普及は、地域社会における新たな雇用やビジネスモデルを創出する契機ともなっている。

さらに、観光立国政策は日本の国際イメージ戦略とも密接に関連している。訪日外国人の増加は観光収入の増大にとどまらず、日本文化や製品への理解を深める効果を持ち、輸出促進や外交的影響力の強化にも寄与する。観光産業はこのように、経済・社会・文化・外交といった複数の分野を横断する複合的な政策課題となっている。

本研究は、こうした観光立国政策の展開過程とその成果を総合的に検証し、観光産業が日本経済の成長戦略の中で果たす役割を多角的に分析することを目的とする。政策の影響は訪日外国人観光客数の増減といった数量的指標のみならず、地域社会への波及効果や産業構造の変化といった質的側面にも現れている。そのため、当研究では統計データの分析に加え、政策形成過程の特徴や企業・地域の対応戦略を踏まえた包括的な考察を行い、日本の観光立国政策の実態と課題を明らかにすることを目指す。


 

1.2 研究課題と分析の枠組み

当研究の中心的な課題は、日本の観光立国政策が観光産業の発展にどのような影響を与えてきたのかを多面的に検証し、そのメカニズムを明らかにすることである。観光立国政策は訪日外国人観光客の増加や観光収入拡大を目標としてきたが、その成果は単なる数値的な成長にとどまらず、地域社会や国内産業構造の変化、さらには日本の国際的地位向上にも関連している。本研究では、この政策が経済政策の一環としてどの程度有効であったのかを評価し、短期的な観光収入の増加だけでなく、中長期的な社会・経済構造への影響を明確にすることを目指す。

分析の枠組みとして、第一に政策形成過程に着目し、観光立国政策がどのような歴史的背景と社会経済的文脈の中で策定されたのかを明らかにする。日本は高度経済成長期において国内観光を中心とした内需主導型の観光政策を展開してきたが、少子高齢化や国際競争の激化を背景に、2000年代初頭から国際観光振興が国家戦略として位置付けられるようになった。この政策転換の過程を整理することは、観光立国政策の狙いや意図を理解し、その効果を評価する基礎となる。

第二に、観光産業の発展指標を用いた定量的な分析を行う。訪日外国人観光客数や観光収入、宿泊施設や交通インフラの整備状況、関連産業への波及効果など、多角的なデータを基に政策の影響を可視化する。また、外国人観光客の消費傾向や滞在パターン、観光地の人気動向といったミクロなデータも参照し、観光需要の変化がどのように産業構造を変容させたかを検討する。こうした定量的評価は、観光立国政策が経済全体に及ぼした直接・間接の影響を客観的に把握するために不可欠である。

第三に、観光立国政策の質的側面に注目し、政策による社会的・文化的影響も評価対象に含める。外国人観光客の急増は地域文化の発信や国際交流を促進した一方で、観光公害やオーバーツーリズムの問題を浮き彫りにした。こうした副作用の分析は、観光政策を経済効果だけで判断せず、社会的コストや地域社会への負荷を含めた包括的な評価を行うために重要である。観光立国政策の真価を明らかにするには、利益と課題をバランスよく捉える必要がある。

以上の視点を踏まえ、本研究は政策形成の歴史的背景、定量的指標に基づく経済的効果、そして質的評価の三つの観点から観光立国政策を総合的に分析する。この枠組みにより、日本の観光産業が国家戦略としての政策介入を通じてどのように発展したのかを解明し、今後の政策立案や産業発展の方向性を考察するための基盤を築くことを目指す。


 

1.3 研究方法と構成概要


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