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19世紀重商主義の影響下における日本近代化の変遷整理

目次

1章 重商主義の理念と世界的展開
1.1 重商主義の基本概念
1.2 欧州諸国における重商主義政策の展開
1.3 重商主義の経済思想と社会構造への影響

2章 日本への重商主義的接触の初期段階
2.1 江戸時代末期の外国貿易と政策的対応
2.2 鎖国下の国内経済と重商的視点の萌芽
2.3 開国前後の経済・政治的緊張

3章 明治維新と重商主義の影響
3.1 殖産興業政策と重商主義の関係
3.2 近代産業育成と欧米技術の導入
3.3 財政制度の整備と経済近代化

4章 日本の貿易政策と重商的戦略
4.1 関税政策と保護主義の展開
4.2 輸出振興と国内産業保護
4.3 通商条約改正と重商的交渉の成果

5章 産業資本形成と近代化の進展
5.1 銀行・金融制度の整備と資本蓄積
5.2 重商主義的視点による企業育成
5.3 地方経済の近代化と都市化の波及

6章 社会・文化面への影響
6.1 重商主義がもたらした社会意識の変化
6.2 教育制度と人材育成への影響
6.3 都市文化と消費行動の変容

7章 近代化の総括と重商主義の評価
7.1 経済構造の変化と政策の役割
7.2 近代化過程における重商主義の功罪
7.3 現代経済への示唆

参考文献一覧


 

1.1 重商主義の基本概念

重商主義は、16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで形成された経済思想であり、国家の富と権力を増大させることを目的とした政策体系である。重商主義の中心的考え方は、国家の富を金銀などの貴金属の蓄積に求め、輸出を奨励し輸入を抑制することで貿易黒字を実現する点にある。この思想は、単なる経済理論ではなく、国家戦略としての経済運営に直結しており、国家が経済活動に介入することを正当化する根拠となった。

重商主義は、国家の富を測る尺度として貴金属の保有量を重視することから、「金銀本位主義」とも呼ばれる。国家は貿易黒字を通じて金銀を国内に蓄積することにより、軍事力や外交力の増強を図ると考えられた。そのため、輸出を奨励し、国内産業の保護を通じて輸入を抑える政策が重視された。具体的には、関税の引き上げ、輸出補助金の支給、国内産業の育成支援などが典型的な重商主義的政策であり、国家主導の経済活動が中心となった。

また、重商主義は経済活動の中心に国家を据える思想であり、個人の自由な経済行動よりも国家の利益を優先する点が特徴である。市場経済の自律性よりも、国家が経済の方向性を統制し、国内産業の競争力を高めることが重視された。この考え方は、後の近代国家の産業政策や貿易政策の先駆けとなり、国家が積極的に経済に介入する正当性を理論的に支える役割を果たした。

さらに、重商主義は国内経済だけでなく海外植民地の活用とも密接に結びついている。ヨーロッパ諸国は海外植民地を資源供給地および製品市場として利用し、母国の貿易黒字を確保する構造を形成した。植民地貿易により得られる利益は国家の富の増加に直結し、軍事力や外交交渉力の強化に資するものとされた。この点において、重商主義は単なる経済理論を超え、国家戦略全体に影響を及ぼす包括的な思想体系であった。

日本の近代化過程を理解する上で、重商主義の基本概念を把握することは不可欠である。日本は鎖国政策の下で長らく独自の経済体系を維持していたが、19世紀に入ると欧米列強の重商主義的経済戦略との接触が増加し、国内政策の形成に大きな影響を与えた。当研究では、まず重商主義の理念と政策原理を明確に整理することにより、その後の日本における近代化政策との関連性を検証する基盤を構築する。

重商主義は国家中心の経済運営、貿易黒字の追求、国内産業保護、そして海外市場・資源の活用という複合的要素を持つ思想である。この思想体系は、経済政策の枠組みとしてのみならず、国家戦略の形成においても決定的な役割を果たした。したがって、日本近代化の変遷を理解するためには、重商主義の基本概念を的確に把握し、その原理が政策や社会構造にどのように反映されたかを検討することが重要である。


 

1.2 19世紀日本における重商主義的要素の導入


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